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2026年3月2日 · 三重県伊賀市

32か月、90頭 — 伊賀の谷で牛を育てる

伊賀牛の出荷は年に約1,300頭。その大半が三重県内で消費され、県外にはほとんど出ません。

山に囲まれた伊賀の牛舎。朝の光が通路に差し込んでいる

伊賀牛とは何を指すのか

伊賀牛は、伊賀市と名張市で12か月以上肥育された黒毛和種を指します。ブランドとしての歴史は明治期にさかのぼりますが、規模は小さいままです。松阪牛の出荷が年間およそ4,500頭、伊賀牛は1,300頭。県外に流通する量が少ないので、東京の飲食店でも扱う店は限られます。

青柳牧場と、三代目の経歴

青柳牧場は伊賀市の南、青山高原のふもとの谷にあります。牛舎は3棟、常時90頭ほど。三代目の青柳健司さんは1978年生まれで、大学を出てから5年間、名古屋の食肉卸で働きました。「売る側にいたから、枝肉になったあとに何を見られているかが分かる」。2006年に牧場を継ぎました。

餌に何を混ぜているのか

一日は5時半の給餌から始まります。飼料は自家配合で、稲わら、ビール粕、大麦、米ぬか、豆腐粕。稲わらは伊賀市内の米農家から直接買い、輸入わらは使いません。「わらの質は、糞を見れば分かる」と健司さんは言います。給餌は朝と16時の2回、量は一頭ずつ変えます。

盆地の寒暖差は、肉に効くのか

伊賀は盆地で、夏と冬、昼と夜の寒暖差が大きい土地です。8月の日中は35℃を超え、1月の朝は氷点下になります。牛にとっては楽な環境ではありませんが、この差が食欲の波を作り、脂の質に効くというのが健司さんの見方です。夏場は牛舎に霧を出す装置を回し、体温を下げます。

なぜ32か月まで肥育するのか

一般的な和牛の肥育期間は28〜30か月。青柳牧場は平均32か月です。4か月長いぶん、餌代が一頭あたり10万円以上増えます。「30か月を過ぎたあたりで、脂の融点が下がってくる。口の中で溶ける温度が変わるんです」。数字で証明できるものではなく、市場のセリで結果を見るしかない、とも言います。

等級はどこで決まるのか

枝肉は月に2回、伊賀市の食肉市場でセリにかけられます。格付はここで決まります。A5・BMS10以上が付くのは全体の2割ほど。当店のサーロインはこの区分のものだけを使い、それ以外は肩ロースやハンバーグに回ります。健司さんはセリのたびに立ち会い、自分の牛が何番の値をつけたかを記録しています。

個体識別番号で何が分かるのか

牛舎の壁には、一頭ごとの個体識別番号と生年月日を書いた札が下がっています。10桁の番号は家畜改良センターのデータベースで誰でも照会でき、生まれた牧場までさかのぼれます。お届けする商品にもこの番号を記載しています。「牛の名前は付けません。番号で呼びます。名前を付けると出荷できなくなるので」。

誰が継ぐのか

妻の佳代さんは事務と発送を担当しています。息子の蓮さんは高校3年生で、畜産の大学に進むかどうかは決めていないそうです。「継げとは言いません。ただ、うちの牛を食べた人が『伊賀牛』という名前を覚えて帰る、その回数が増えれば、選択肢としては残ります」。

青柳牧場

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